5/12 関西コミティア70 D-14 新刊あります

2話 愛枝けい/R~ステージが終わったら

あらすじ

期待の新人アイドルといわれ、本人の想像以上に評価がうなぎ上りの「R」。
2日目のトップバッターという大役。慣れない環境に緊張しすぎて眠れなくなったレイを見かねたリョウヘイは、無理矢理疲れさせて眠らせようとレイを押し倒し――。
小説は全年齢(前半)・後半はR18のまんがになります。

まんがも小説も人気絶好調の王者・愛枝けいさんによるセルフリレー創作をお楽しみください。

著者:愛枝けい

*** *** ***

もう三日はろくに寝ていない。

「フェス、出るぞ」

ある日の凌平の一言に絶句した。澪レイは先日アイドルユニットデビューを果たしたばかりのど新人だ。テレビ収録やライブハウスの対バンなどは少しずつ慣れてきたように思えるけれど、いきなりこのような大きな野外フェスには出たこともないし行ったことすらないのだ。

「歌って踊ること以外、することは変わらん」

いや、変わるって……。何事もないかのように言い切る凌平リョウヘイに澪はツッコミをする気力も削がれている。
いつも彼は唐突だ。フリーターだった澪をいきなり道でスカウトするや否やデビュー。まるで相棒さえ見つかれば全ての準備は整っていたと言わんばかりのスピードデビューだった。曲も振りも既に決まっていたのだ。幼少よりダンサーを目指し、日々ダンス漬けだった澪は右肩を壊し、毎日腐ったように過ごしていた。そんな彼に凌平のスカウトは魅力的以外の何者でもなかった。


「はあ……」

ため息しか出てこない澪は窓ガラスに手を当て、真っ暗な景色を眺めている。見渡す限りの山、山、山。
こんなの、小学校の時に行った自然学校ぐらいでしか行ったことがないような山奥だ。そして、ここが明日のフェス会場。誰かスポンサーの持ち物らしい。

凌平がどこからか手配した豪華なトレーラーハウスの中で、執事の都築がハーブティーをカップに注ぐ。異国の顔立ちの都築は初老の男性だ。幼い頃から有名子役だった朝田凌平にずっとついている使用人の一人なのだ。朝田という姓は凌平の母方のもので、本当の凌平は英国にレコード会社とモデルエージェンシーを持つ父が経営する老舗会社の跡取りなのだ。シングルだった母親は凌平の子役時代に再婚したといういきさつがある。

「澪様、ゲネ、お疲れ様でした。毎日淹れて差し上げているこの都築オリジナルブレンドをお飲みになれば落ち着いてお休みになられますよ」

毎日ティーポットに用意してくれている彼特製のティーは確かに良く眠れるのだけれど、今夜は効きそうにない。

「ありがとう都築。そういえば凌平は?」

澪は、ゲネが終了してからトレーラーに戻ってこない凌平が気になって尋ねた。

「凌平様は私のキャンピングカーでお仕事をなさっています。凌平様のお仕事は時差の関係で今がお仕事のお時間ですから」
「そっか。大変だね」

凌平の父の会社は海外で手広く事業に携わる。主に芸能、音楽、ファッション。子役として幼少期に名を馳せた凌平は海外留学のため芸能活動を終えた。

凌平は現在、父の事業の中でも英国に拠点を置くモデルエージェンシー社長を兼任していた。だからオフを取り、一年間に数ヶ月しかアイドル活動はできない。サラサラの黒髪に端正な顔立ち、高身長にどこかアンニュイな雰囲気を持った凌平はどちらかというとアイドルには全く向いていないと澪は思っていた。だが、滅多に笑わない凌平はそのクールな表情が人気を博し、口元が少し緩むと女性の黄色い声が上がるのだ。ふわふわの茶色い髪に満面の笑顔を振りまく澪にはあまり面白くない現象だった。澪が凌平にスカウトされた時は、ゴリゴリのダンサーの容姿でコーンロウにピアスをいくつも開けたジャージ姿だった。アイドルという職業に近づくため、髪を元に戻し、表情もヒップホップから脱出するべくキラキラに変身した。痛めた肩はマイクさえ持てばダンスには影響しない、元々ボーカルダンススクールに通っていた澪には歌うことは慣れていた。幼い頃より憧れの先輩に追いつけるようにと努力を怠らなかった。アイドルになった今の生活もなんとか頑張って慣れてきたのに、だ。

今日はわずかな自信を打ち砕かれた。ゲネプロでフェス出演ゲストメンバーのステージを見せつけられたのだ。テレビ局などで会ったことはある。知名度も自分とは比べものにならないビッグなゲスト達なのでその名くらいは知っていた。だけど生のステージで彼らを観て、思ったことは一つ。
できるのだろうか。もしステージに客が一人もいなかったら?澪は明日の自分のステージが少し怖くなっていた。

【つづきはアンソロジーにて】

後半のえっちっちシーンはオールマンガです。緊張していたはずの澪がえらいことに……!!?!w